令和6年度全国水試場長会会長賞
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令和6年度全国水産試験場長会会長賞受賞業績の概要
令和6年10月4日、リモートによr開催された会長賞表彰審審査委員会において、海面部会2ブロックと内水面部会1ブロックから推薦のあった以下の3業績について、各研究担当者からそれぞれ説明を受けて審査した結果、いずれも令和6年度全国水産試験場長会会長賞表彰を受けるにふさわしい業績と判断されました。
令和6年度全国水産試験場長会全国大会(令6年11月7日 長野市)でそれぞれ表彰され、記念講演が行われました。
「温暖化に対応するコンブ養殖技術の改良と普及」 -コンブ成熟誘導技術の開発-
機 関:北海道立総合研究機構 稚内水産試験場・調査研究部
研究者:主査 前田 高志
北海道におけるコンブ養殖業で問題となっていた、高水温等の海洋環境変動に伴う母藻成熟の遅れを解決するために「成熟誘導技術」を開発し、事業規模での実証試験を通じて、生産現場への技術の普及が急速に進んでいることは高く評価できる。また、確実に母藻を確保できるようになり、早期の種苗生産と養殖開始により品質向上や収量増加を実現し、養殖コンブ生産の安定化につながっていることから、気候変動への対応を図った試験研究の手本となる事例であり、地域の水産業の発展に大きく貢献するものと認められる。
「アカムツ種苗生産技術の開発に関する研究」
機 関:富山県水産研究所 栽培・深層水課 アカムツ種苗生産技術開発研究チーム
研究者:主任研究員 福西 悠一
平成25年に世界で初めてアカムツの稚魚生産に成功し、初期生態の解明や増殖研究を大きく発展させると共に、課題となっていた成長の遅さとオスに偏る性比バランスについても、飼育水温の制御や大豆イソフラボン展着飼料による改善策を見出すなど、他魚種の種苗生産技術開発でも参考になる知見が多く蓄積されている。また、平成28年から令和4年までに約22万尾の種苗を富山湾に放流した結果、水揚げされる放流魚の尾数は年々増加傾向にあり、本種の資源増大に資することが期待されることなどから、地域の水産業の発展に大きく貢献するものと認められる。
「食味に優れた大型雌ウナギ生産技術の確立」
機 関:愛知県水産試験場 内水面漁業研究所(現所属 漁業生産研究所)
研究者:主任 稲葉 博之
ウナギの養殖用種苗に用いられる天然ウナギの稚魚の漁獲量が減少し、資源の有効利用が求められている中で、大豆イソフラボンによる雌化に着想を得て、ウナギの雌化技術の開発を行い、民間企業と大豆イソフラボン飼料の製品化を達成したことは高く評価できる。また、雌ウナギは食味にすぐれ、生産性も向上する等、ウナギ養殖業者の収益向上に寄与する効果が得られたことで、全国各地で本技術の導入が進められている。その結果、雌ウナギの新規市場の開拓と共に、ウナギ資源の有効利用につながることが期待されることから、地域の水産業の発展に大きく貢献するものと認められる。