試験研究は今 NO.106

Q&A? 日本海側ではこの春は例年になく海藻が繁茂していますが、水温はどうなっていますか。

 最近、地球の温暖化がよく話題になります。海でも暖海性の魚が獲れたという話をしばしば聞きます。ところが、今年に入ってからは逆に、春の水温上昇が遅く、魚種によっては漁期が遅れているところがあります。そこで、中央水試の前の岸壁で毎日測定している水温資料を用いて、水温の長期変動をみてみました。
 1961年から1990年までの30年間の旬別平均水温を平年値として、この6年間の旬別の偏差(平年値との差)を図1に示しました。1989年の夏から続いていた高水温の傾向は1991年の夏で終わり、それ以降はほぼ平年値に戻っていることがわかります。今年の春の水温が低いというのは、記憶が新しい1、2年前と比べてということであって、30年の平均値と比べると、今年は平年並みというわけです。
 水温の長期変動を気象学的に検討する場合には年平均水温が用いられることが多いようですが、水温と生物との関係を検討する時には、最高水温や最低水温が重要になります。というのは、中緯度の沿岸生物は水温の季節変化が激しい環境下で棲息しているからです。そして、その種にとって不都合な水温条件の持続期間が成長や生残に、さらに分布域に影響を及ぼすと考えられます。
 日本海側沿岸で問題となっている磯焼けの発生原因、あるいは持続原因の一つとして、冬の高水温が考えられています。冬は多くの種類の海藻が芽生える時期です。この時期に水温が高いと、ウニ類や小型巻貝のような食値動物の摂餌活動が持続することとなるので、芽生えが食べられてしまうことになります。逆に、水温が低いとそれらの摂餌活動が抑えられるので、海藻の芽生えが生き残ることになり、やがて春に繁茂することになります。

 そのような観点から、余市の水温資料を用いて、冬の水温の長期変動を整理してみました(図2)。この冬の水温は1,2年前に比べて低くなっていますが、60年間でみると低いとはいえません。冬の水温は1944年ころ、1951年ころ、および1984年ころにだげ、3〜4℃ですが、それ以外はほぼ5〜7℃でした。
 1984年の冬から春先にかけて、全道的に水温が極めて低く、その春に磯焼け地帯でもコンブが繁茂しました。しかし今年の冬の水温は5℃以上でしたので、1984年の状況とは異なるようです。ご質問では例年になく海藻が繁茂しているということですが、深いところでも繁茂しているのでしょうか。磯焼けといっても、陸上から観察しやすい潮間帯では春にはワカメ等の海藻が繁茂していることが多いのです。現在、水試増殖部や水産指導所が詳細を調査しています。
 磯焼けは1950〜1955年ころから見られるようになった、といわれています。図2を見る限りでは、冬の高水温化(5℃以上)と時期が一致しているようにみえますが、積丹半島の先端での1911年から1957年までの水温資料をみろと、必ずしもそうとはいえないようです。
 なお、夏の水温の長期変動に関しては別の機会に紹介したいと思います。

(中央水試 海洋部 西浜雄二)


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